リサーチ結果の「お蔵入り」を減らす方法①: 調査設計で一番大事なことは「具体的な仮説」と「調査結果からのアクション」

 事業会社内のマーケティングリサーチでありがちな「お蔵入り:結果をみて、”ふ~ん”、で終わる」を減らす方法です。リサーチをやっていて一番残念なことが、調査を実施して結果をだしたにもかかわらず、(依頼され数百万円かけてやったのに…)、依頼元のオーナーの施策に活かしてもらえないときです。私は個人的に「お蔵入り」と呼んでいます。


リサーチを初めた最初の年は、よくお蔵入りを経験しました…。失敗を経験したことで、ある程度防ぐ方法もわかってきたため、ご紹介したいと思います。


「お蔵入り」を防ぐうえで、一番重要な事は「具体的な仮説」の設定です。その次に大事なことが「調査結果からのアクション」です。


 まずは「具体的な仮説」の設定をする際に、私が普段から気を付けていることを書きます。お蔵入りになる調査の多くは、仮説の設定が甘いです。仮説は調査の骨子になるものですので、はじめにきちんと設定しておくと、その後、設問を設計する時にも、軸がブレずに作ることが出来るというメリットもあります。


 仮説設定の際は、出来るだけ具体的に検証したいポイントを洗い出しておく事が重要です。


良い例:満足度調査

 ユーザが満足している要因を知りたい。私の中では今年実施した施策A、施策B、施策Cのうち、Aに触れたユーザが最も満足度が高いと考えている。その理由は施策Aでは、「ユーザの声を直接聞いて、その場で改善に反映させた事」が一番の理由だと考えているからだ。この傾向は○○の理由から、20代限定の傾向だと予想している。


悪い例:

ユーザが不満に思っている点をまずは聞きたい。特に想定はないが、その結果から何かヒントが得られるだろう。


往々にして、「悪い例」の場合は、結果が出ても何を改善すればよいかが分かりません。

恐らく質問を作る際にも「不満な点は何ですか?」とだけ聞き、あまり具体的な答えが返ってこないと思われます。


では、良い仮説を作るうえでは、何が大事なのでしょうか。普段私が気を付けていることをあげてみます。少しリサーチとは遠い話に感じるかもしれませんが、個人的には効果があると考え行っている活動です。


■リサーチャーが、普段から気を付けておいた方が良い点


現場の感覚を持っておく


-少し現場から遠いマーケティング担当者であれば、できるだけ現場(例えば営業との会話)や、お客様との商談、関係者との飲み会に参加して、リアルなビジネスを肌感覚で知っている事が重要です。

仮説設定が甘いケースの多くが、現場感覚が無い事に起因します。調査対象のことをよく知らない場合であり、これが「ふ~ん」で終わる要因の一つです。5分でもその道のプロと話せば気づくことも多いため、現場の方と話す事で、具体性のない仮説は少なくなります。


・できるだけ人と違う視点を持っておく様に意識する


-リサーチをする際、人が気づかない視点を持っていることは仮説設定をするうえで、役立ちます。

 私のケースですが、例えば社員向けに「新発売予定の製品の試用テストに協力してください」という告知があり、社員の多くがテストに参加している場合があるとします。私はそういった時は、その試用テストには参加しないようにしています。そうする事で、「使用前の消費者の感覚」を忘れないためです。テストをした人がマーケティングプランを立てる際、「実際に使用して感じる効用/メリット」をもとにプランを立てる事が多くありますが、それは購入後の消費者の感覚に近いものになります。いわゆる「関与が高い」状態であり、購入前のお客様にどう製品の魅力と伝えるのか?という視点が抜けてしまいます。

 あくまで一例ですが、普段接する人、情報ソース、行動様式などを"少し"変えて普通の感覚とは違う感覚を養うようにします。


普段から課題意識を持っておく


-第一印象で「変だなー」と感じたことはメモに取るようにしています。(場合によっては組織や何かの施策の課題でもいいと思っています。)そして、それを定期的に振り返る様にしています。同じ環境に長くいると、おかしな事もそのうち普通に感じてしまうため、最初の印象を大事にしています。調査というのは、今まで気づかなかったものや、課題を検証して、それを改善に結びつけることです。仮説設定は、根本にある課題とリンクした方が、その後アクションに結びつきやすいです。こちらも仮説設定の時に役に立ちます。


以上、仮説設定を行う際のトピックを記載してみました。


次回は「調査結果からのアクション」について書く予定です。


事業会社勤務 リサーチ担当者のblog

事業会社(とある上場企業のメーカー)勤務のマーケティングリサーチ担当者の視点から、現場で役立つ調査やデータ分析のノウハウを紹介

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