スクリーニング条件のコツ ~定量調査の設計で、うまく対象者を絞るには?~

 定量調査を行う場合、調査会社に委託し、その会社のパネル(回答者が登録された媒体)を利用して調査を実施する事が多いかと思います。その際、調査のフローは大きく「スクリーニング調査」と、「本調査」の二つに分かれます。スクリーニング調査で対象者を絞り込む設問を入れておき、そこで条件に合致した回答者が、本調査に進むイメージです。今回はそのスクリーニング条件を設計する際のトピックを書きます。


また説明のため、下記の様な調査だったと想定します。

例:あるパソコンメーカーの製品担当者が、今後1年間の需要予測を行うため、「パソコンを次買い替える際に、新しいパソコンを買うのか?それともパソコンではなく、タブレットを買うのか?について調べたい」といった調査をインターネットの定量調査で実施する場合を考えます。



■スクリーニング条件を設定する場合に気を付けるべき点


①意図した対象者が、絞りこまれているかを確認する


-(当然ながら…)意図した対象者を選抜出来ているかを確認します。今回のケースですと1年間に買い替える対象者の情報を把握したいため、スクリーニング条件に「PCの買い替えを1年以内に検討していること」といった設問を含めるイメージです。

あまり独りよがりにならないように、調査委託会社の方や依頼元と相談しながら決めた方が無難です。「○○の設問で対象を絞ったけど、それだと本来必要な○○の層も削ってしまっているよね?」というやり取りが調査後に発生してしまいます。


②パネルの特性を調べておく


-私が利用している、ある大手調査会社のパネルでは、女性の30-40代の回答者が多いといった偏りがありました。これはパネルの集客方法による影響です。調査会社に質問をすれば、どのように回答者が集められたのか?また人口分布から見た偏りがあるか?は教えてもらえると思います。

(ここで、「全く偏りはありません~」と答えられると、個人的には本当かなーと疑問に思います…)

 偏りが分かれば、「ウェイトバック/ウェイト修正」と呼ばれる手法で歪みを治します。年代の偏りは、統計局が定期的に出している人口分布の情報から、過剰に出てしまう女性 30-40代層(回答者ポイントを稼ぐため、主婦層の人が多く参加するようです)を調査後に少なめに補正します。もしくは調査の前に「セル」といわれる「集客枠」を設けて、そこにあらかじめ年代×性別であつめる人数を統計局発表の比率と合わせて設定しておくなどの準備をします。


③対象者を絞りすぎないように注意する


-仮に30代の消費者に焦点をあてる場合でも、スクリーニング条件で30代だけに絞って設定してしまうと、比較ができなくなるため注意が必要です。30代の傾向は、別の年代と比較して初めて分かる情報のため、「差」を見るため、比較対象を考えてスクリーニング条件を設定する必要があります。


④過去、社内で実施した、似たような調査のスクリーニング条件をチェックしておく


-「1年前に実施した調査と結果が大幅に違う」というコメントが社内からあった場合、同条件で行ったのか?それともスクリーニング条件を変えて調査したのかを判断する必要があります。また、今後他のリサーチャーが調査する時にも、似た様なテーマであればスクリーニング条件は統一した方が無難です。定義を合わせておくことで、比較ができ、また議論をする際の誤解も少なくなります。


⑤対象者を絞らずに聞きたい設問は、このスクリーニング条件の設問内で聞いておく


-本調査に入って「パソコンメーカーとして思いつく会社といえば?」というブランド想起を聞きたい場合、スクリーニング条件で絞った後に聞いてしまうため、「PCを1年以内に買い替え予定の人」の条件で絞ってしまうことになります。広くブランド認知を聞きたいような設問は本調査に行く前の、スクリーニング条件の前半に入れておきます。


⑥答えてほしくない人を除外する


-純粋な消費者の意見を知りたい場合、また、競合に調査内容を隠すため、同業他社のPCメーカー勤務の人を除外したい場合もあると思います。このような人を除外するため、同業者の除外条件を入れるケースもあります。


⑦あてずっぽうに答える人を除外する


-全てYesに○を付けるような、あてずっぽうでつける人を除外するため、チェック設問を入れるリサーチャもいます。例えば、Q1「私は倹約家である」という質問をYes/Noで用意し、その後複数の設問を挟んで、Q13「私は金遣いが粗い」という設問もYes/Noで用意します。Q1でYesと答えて、Q13でもYesと答える人がいた場合、矛盾している回答のため、分析の際には対象者から除外するような形をとります。


以上になります。


他にもこういう工夫をしている~という方がいらっしゃいましたら、コメント頂けますと幸いです。

事業会社勤務 リサーチ担当者のblog

事業会社(とある上場企業のメーカー)勤務のマーケティングリサーチ担当者の視点から、現場で役立つ調査やデータ分析のノウハウを紹介

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